地方創生が舞台「救国ゲーム」の感想|結城真一郎

はじめに

 今回紹介する救国ゲームは「#真相をお話しします」で有名な結城真一郎の長編作品。自分は「#真相をお話しします」で面白いと感じたため、救国ゲームも読みました。住人の少ない地方でドローン、自動運転など高度な技術を用いて地方創生が行われた村が舞台となっています。地方創生と言えば今の日本でもよく話題になる話ですが、そんな中で有名人の殺人事件や全国民を人質にした犯行声明などが起こります。
 今回は簡単に読んだ感想について述べていきます。

ストーリ

 過疎地域「霧里」を再生し地方再生の成功者である「神楽零士」。彼は自動運転のスマイリー、3つのドローンによる宅配サービスで村に物資を届けるサービス、様々な人材を集めて成し遂げていきます。
 そんな中インターネット上で「パトリシア」と呼ばれる若女の能面を着けた人物が台頭します。神楽零士とは正反対に中央の都市圏から国家予算が流れて地方に使われている現状に異議を唱え、地方は切り捨てるべきだと言います。そして政府に「60日以内に過疎対策を撤廃せよ」もし何もしなかったら、大変な事態になると警告します。

 そして60日を過ぎてしまい神楽零士が殺されてしまいます。しかも胴体はスマイリー、頭部はドローンの中に入った状態で発見されます。状況から犯人は霜里の住人です。霧里に住んでいた「晴山陽菜子」が元同級生で天才官僚「雨宮」に助けを求めます。事件を調べるにあたり、頭部や胴体をそれぞれ載せた場所や時間の記録から時間的にはほぼ不可能に近く、調査は難航します。またパトリシアは犯人は自分であること、まだ政府が言うことを聞かないなら地方に住む国民に無差別テロを仕掛けると宣言します。どこかデスゲーム的な不気味さも感じますね。

犯人はどうやって殺人事件を行ったか?
犯人の殺人・地方への無差別テロ予告の動機は何か?

気になる点が多い状態で物語が進んでいきます。

面白かった点

 地方再生に使われたもので残虐な事件、全国民を人質に取った犯行声明。どこか非現実的な状況ですが、事件に使われたトリックは現実に根ざしたものであり、謎を解き明かすため地道な調査や解き方の過程は読んでいて面白かったです。

 よくミステリー小説はトリックはすごいけどそれを解くまでの過程があまり丁寧に書いていなくて、登場人物にあまり感情移入しにくいような作品、もしくは日常のちょっとした謎を面白い過程で解く作品があると思います。トリックの面白さか解く過程の面白さどこかトレードオフでどちらかしかない作品が多いと思いますが「救国ゲーム」はちょうどよいバランスでどちらもあるような感じです。そしてトリックを作り出した天才VS謎を解く天才官僚の構図も見ていて面白いと感じました。
 犯人の動機も皮肉の利いた感じで、読後にとても切ないという感情が残ってしまいました。

おわりに

 まとめますと

  • 地方創生のテーマが好きな人
  • トリックや現場の異常な作品が好きな人
  • 謎を解いていく考え方やその過程が好きな人
  • 犯人の動機に切なさを感じる作品、感情移入できる作品が好きな人

これらに当てはまる人にはお勧めします。
興味を持った人は是非読んでみてください。

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