はじめに
今回紹介する本はひとつむぎの手で医療をテーマに主人公が厳しい環境に置かれながらも自身の進む道を模索する話です。
作者は知念実希人さんで天久鷹央の推理カルテがアニメ化・ドラマ化された本でありますね。
そういえば今まで医療系のドラマ・映画・アニメは見たことあるけど本は読んだことがないなっと思い今回いい機会ですし、この作品を読んでみようと思いました。
読了後の感想を述べていきます。
内容
導入
主人公は大学病院に勤めています。
自身の大学にいる憧れの心臓外科医になるために帰れる日がないほど日々過酷な環境で業務をこなします。
真面目さや努力を怠らない部分が余計彼自身を追い詰めています。
そんな中、研修生として3人を教えて無事心臓外科の医局に入局させることが出来たら
富士第一に出向させるという交換条件を出されます。
富士第一は主人公の第一希望であり、もしできなければ心臓外科がない沖縄へ飛ばされることになります。
こんな夢を利用して仕事を引き受けさせるというドロドロした環境がブラックすぎる！
研修生・ライバルとの交流
研修生たちとの交流から、医師として患者に向き合うこととは何かを考えさせられます。
上司からの3人を何としても厳しい環境の心臓外科に入れさせることを言われて、どうしたら魅力が伝わるか自身がどうして魅力に感じたかと置き換えて考えさせられます。
心臓外科のマイナス部分を伏せるかありのままを見せるか？
上司からの指示にどうこたえるか？
患者の思いにどうこたえるか？
研修生の現場と夢で生じる矛盾に対しての問いにどうこたえるか？
最初の研修を引き受けた動機は自身の利益による不純な思いですが、自身の本当に大切な夢や考えは何か？そのために目の前で全力に取り組むことは何か？いろいろ考えさせられます。
また自身の尊敬する赤石教授の甥が富士第一を取り合う強力なライバルとして立ちはだかり、常に劣等感を感じてしまいます。
理想と現実、夢と自身の家族の幸せ。
絶望的な状況であらゆる価値観を天秤にかけて、本当に自身が望むものを選択していかなければならない展開となっています。
告発文
さらに研修中に赤石教授が賄賂を受け取り、薬の効果を捏造したという告発文がFAXで流れます。
告発文が本当か嘘か？
この部分が主人公の尊敬する教授がどういった存在か改めて考えさせられます。
誰が告発文を送ったのか？
告発文を送るような利害関係の人は医療関係のドロドロした立場から候補者がたくさんおり、誰が送ったのかを調べる展開となります。
さらに告発状は世間で騒がれるようになり、かつては慕っていた人が赤石教授を露骨に避けるようになっていきます。
おわりに
この作品は過酷な環境や背景を持った主人公が研修や医療現場のドロドロした事件や関係、挫折を通して自身の進むべき道を最終的に決めるまで丁寧に書かれています。
医療ドラマでよくある天才が華麗に手術をして解決するという感じではなく、努力家ですが不憫な環境で生きており挫折など通してそこから自身の夢を見つけるという部分が新鮮でした。
題名にも通ずる「自分の形で人を紡ぐことのできる医師になるんだぞ」という部分が印象に残ります。
最後まで読んで前向きに生きていこうと感じる作品になっています。
もし興味が湧いたら是非読んでみてください。
