犯人を特定してはいけない!「十戒」の感想|夕木春央

はじめに

 十戒は夕木春央さんが書いたクローズドサークルの小説です。前作の方舟ともちょっとしたつながりはあります。ただ匂わせ程度なので方舟を見てなくても楽しめる作品です。また読んだ人からしたら方舟みたいな最後の落ち特殊状況の殺人事件は健在なので、前作を面白いと感じたら読んでみた方がいいです。
 今回は読了後の感想を述べていきます。

内容

序盤

 浪人中の学生、里英は父と仕事関係の人たちを含めた9人で伯父の所有していた島をリゾート開発するための視察で訪れます。

 しかし視察の翌朝に一人が殺されて、十戒と呼ばれる犯人を三日間の間特定してはいけないというルールを守らないといけません。さもなければ島に仕掛けられた爆弾でみんな死んでしまうことに・・・

 犯人の意思に従順に従う限定的なディストピアを生き残ることはできるのか。

犯人が管理者のディストピア

 普通のミステリー作品と違うのは犯人が特定できないように行動しないとやけを起こして全員爆弾で全滅します。

十戒の内容は

  • 三日間島から出ない
  • 島外に島の状況や殺人を伝えてはならない
  • 怪しまれないように関係者に三日後に島から帰ることを伝える
  • スマホでの連絡は全員の合意で必要時用いることが出来る
  • 島外へ怪しまれないよう連絡する際は全員の監視下のもと行う
  • 複数人が30分以上同座してはいけない
  • 島内の状況を記録してはならない
  • 寝室に各自一人で起床し、部屋を訪れる際はノックすること
  • 脱出や指示の無効化は試みてはならない
  • 殺人犯を知ろうとしてはいけない

こんな感じで絶対犯人のために従えというルールでがちがちに固められます。しかも毎朝特殊な犯人による願いが出てきます。

 なんなら証拠隠滅のためにみんなに協力させたりします。こういった場面でも登場人物は冷や冷やします。致命的な証拠を残していた場合全員が気づき爆弾で皆殺しの可能性があります。なので犯人が事件を起こしていく際に「頼むから一目でわかる証拠を残さないでくれ」とみんなが考えて、従順に犯人に従うのは独特なディストピアの雰囲気があります。

 またこんな狂った島から無事生還し平凡な日常を過ごすことはできるのか?
前作を知っているほどこの疑問がずっと頭によぎってしまう呪いがかかってますからね(笑)。

 そして主人公の成長?もあります。
受験の逃げで島に来たのに狂った状況で何を思って生きていくのかも面白いです。

おわりに

 犯人に管理されルールに従うという部分は今作のユニークな部分です。
また前作同様の約束されたエンディングで不気味な落ちが待ってますので
興味が湧いたら是非読んでみてください。