原子力潜水艦が世界平和?「沈黙の艦隊」の感想

マンガ

はじめに

 「沈黙の艦隊」はかわぐちかいじさんが描いた全32巻の漫画です。最近映画化&ドラマ化されて有名になりましたよね。またかわぐちかいじさんと言えば「空母いぶき」のシリーズも最近の漫画として出されています。近代の紛争や戦争について書いている作者です。今作は原子力潜水艦、しかも核ミサイルを搭載しているというヤマトが主役です。
 今回は全巻読了後の感想を述べていきます。

内容

序盤

 潜水艦やまなみがソ連の原子力潜水艦と衝突し圧壊。自衛隊の館長海江田四郎を含む76名が死亡したと報じられますが、実際は全員生存しており日米が極秘に共謀して作り上げた最新鋭原子力潜水艦シーバットの乗組員として選抜された日本人だった。
 しかし、アメリカ海軍第7艦隊の所属となったシーバットですが、突如反乱を起こし音響魚雷をアメリカ潜水艦にぶちかまして目くらまし状態で逃走。海江田シーバット改め武装国家ヤマトを名乗ります。さらに出港時に核ミサイルを積んだ可能性が高いとのこと。
 そんなヤマトが日本やアメリカ、世界を翻弄します。最初は危険なテロリストとして扱われますがアメリカやソ連相手に連戦連勝、さらに世界平和のための具体的な方策を述べだします。

世界平和・各根絶を目指すシステム

 海江田は世界平和を実現するために斬新な考えを次々と発表していきます。
安定した平和のためには国民に対して国家の暴力装置の警察が抑止力としてあるように
超国家組織である世界政府を樹立し専用の国連軍のみが軍事的抑止力として機能させます。そして自らは領土を持たず、侵略性のない適切な時に抑止力として働ける存在であると言います。
 それを実現するための計画として各国家の政軍分離、日本政府がヤマトに保険をかけ、理念に同意した人々や国連を引き取り手にすることで平和そのものをお金で買うという概念のヤマト保険、すべての核を持つ潜水艦が地上の国家への核抑止力を持つ超国家組織としてふるまい、原子力潜水艦に対しては核抑止力が働かず国家が核を手放すようになるという沈黙の艦隊計画(SSSS:Silent Security Service from the Sea)を提唱します。
 これらからは一貫して理念だけでは戦争や核兵器を廃絶することは難しく、力を持った確約、利害関係からなる強固なシステムこそ実現できると主張しています。

感想

 潜水艦の乗組員だけでなく、アメリカ大統領や日本の総理大臣、記者などただの艦隊同士の戦闘だけでなく、世界全体の流れも描いた作品です。このアメリカ大統領のニコラス・J・ベネット海江田がアメリカ海軍との戦闘や核ミサイルを打つかどうかの心理戦に持ち込まれる展開も面白いです。本来たった一つの潜水艦が大艦隊と戦えるなんて不可能だと思いますが、乗組員の技量や絶妙なタイミングでの核の抑止力で難を逃れる様は圧巻です。
 潜水艦・艦隊アクション、心理戦、世界平和実現の難しさなど読んでいてとても面白く、考えさせられる内容が詰め込まれています。

おわりに

 いろいろ今作の世界平和実現のための概念を述べさせていただきましたが、それを海江田が命を懸けた戦いを続け、徐々に何がしたいかどうやって実現するかをヤマトを用いて人々に、そして読者の私たちに分かるようになっています。本当の意味でこの作品で伝えたい理念を理解するのは彼らなりの平和を目指すための戦う姿勢をみないと分かりません
 まとめると

  • かわぐちかいじの他作品(空母いぶき、ジパングなど)
  • 潜水艦のド派手なアクション
  • 核を用いた強力な国家も巻き込む心理戦
  • 世界平和、核根絶を目指す概念

 これらに興味がある人に向いています。
読んで面白いと感じたら是非読んでみてください。

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